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プラスチック。

ガソダム00の個人的二次創作倉庫です。

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永遠のシャングリラ

ロックオフ(仮)とロックオン
(双子設定) 21話後捏造





 帰ろう 想い出の棲む場所へ
 二人手を繋いで どこまでも
 やさしくしあわせな 僕等の楽園へ


 ロックオン・ストラトスの負った傷は深く、彼がマイスターで在り続けることを許さない。
 告げられたそれを、誰もが理解していた。けれどそれは同時に、到底受け入れられるものではなかった。
 稀代のテロリストとなった自分達にとって、この世界に居場所などない。まして、マイスターたる彼にガンダムを降りろと、戦うことをやめろと誰が言えるだろう。

 憂うクルー達の前に、その青年は現れた。
 何故。どうやって。そんな疑問を全て捩じ伏せる微笑を携えて。

「ニール」
 優しく呼びかける声音とその名に、満身創痍の彼は呆然と碧の目を見開いた。聞こえるはずのない声、ありえるはずのないことに、ただ自分と同じ顔を見つめる。
「兄、さん……? なん、で」
「お前の痛みに俺が気付かないとでも思ったのか? 大切な俺の半身」
 青年は目を細め、愛しげに半身の髪を撫でた。
 顔の右側を覆う包帯に瞳が僅かに険を帯び、けれど手は止まらずに、大切なものに触れるように白い指先が頬を辿る。
「あいかわらずのやんちゃだな」
 ゆったりと指が髪に絡み、額と額が触れ合った。

「――帰ろう、ニール」

「……え……?」
 何を言われたのか、一瞬理解できなかった。
 帰る? 何処へ? 自分に帰る場所など、もはやありはしないというのに。
 困惑するロックオンとは逆に、彼はゆるりと微笑んだ。碧の瞳を眇め、弧を描く唇が言葉を形作り、告げる
「帰るんだよ、俺達の家へ。かなしいことも、くるしいこともない、しあわせな場所へ」
「ッなに、言ってんだよ……!?」
 耳を疑った。帰る場所などもうない。ましてや平穏など、許されない。
 そう言い募っても青年の微笑は揺らがない。髪を梳く指は、触れる腕は揺らがない。
 ゆるい吐息が静かに首筋を掠めて。

「もう、なにも考えなくていいんだ。――おかえり、ニール」

 言葉と共に首筋に痛みが走った。
「なっ……」
 ロックオンは信じられない思いで青年を見つめたが、それでも彼は、それはやさしくきれいな表情でこちらを見守っていた。
 目の前が揺らいでいく。意識が闇色に染まる。身体から、力が抜ける。

 腕に身を預けた己の半身を見おろし、青年はその身体をいとおしげに抱きしめた。

「おやすみニール。しあわせな夢を」


 アイルランドの人里離れた場所に、一軒の家があった。
 住人を知るものはいない。けれど夜には暖かな灯りが点り、緑溢れるその家は、一種冒しがたい聖域のような空気をまとってそこに在った。

 朝の木漏れ日が窓から差し込み、白いシーツに影を落とす。そこに眠る青年の上にも。
 衣擦れの音と共に、柔らかな栗色の髪がシーツに散らばっていた。
「……ニール。ニール、朝だぞ」
 純白の波に埋もれる青年と姿写しの青年が、細い肩を揺らし覚醒を促す。その声はひどくやさしく、あまい。
「ニール」
「……ん、」
 うっすらと碧の瞳が覗けば、同じ色の目を細めて片割れが微笑む。それにつられるようにしてもう片方も笑みを浮かべた。
「おはようニール」
「はよ……にいさん……」
「朝飯ができてる。一緒に食べよう」
 窓から差し込む陽の光に目を細める弟の額にキスを落とす。くすぐったそうに笑ってそれを受けると、ようやく彼はベッドの上へ起き上がった。

 パン、ベーコン、目玉焼きにソーセージ、焼きトマトやソテー、そしてミルクと紅茶。
 明るいテーブルでのアイリッシュ・ブレックファスト。
 外にははためくシーツや洋服、やわらかな日差しは緑を鮮やかに見せる。
 窓辺のチェアで読書をして、木漏れ日の中で二人眠る。夜は暖炉と暖かい夕食。
 日常から切り離された、平穏がそこにあった。

 青年は時々、なにかを思い出そうとするかのように空を眺める。けれどまっさらな彼の中には兄しかおらず、真っ白な世界は彼に何も教えてはくれない。そして、彼自身も、それを不思議とは思わない。
 なぜ自分は右目の視力を失っているのかも、なぜ身体に不自由があるのかも、彼は知らない。知りたいとも思わない。

 だって彼はいましあわせなのだから。
 大切な半身と二人、何にも脅かされることなく生きる日々。
 たとえそれが箱庭の楽園であろうとも、彼はしあわせなのだから。

「ニール」
「ん?」
「あいしてるよ」
「……おれも」


 帰ろう 僕等のあたたかい世界へ
 きっとそこは 永遠のシャングリラ




*****
救いはない。でも本人達は幸せそうなのでハッピーエンド(まて)

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